診療科・部門紹介

DEPARTMENT

脳神経外科

施設認定

  • 日本脳神経外科学会専門医認定施設
  • 日本脳卒中学会認定研修教育施設
  • 日本脳卒中学会一次脳卒中センター(PSC)
  • 日本臨床腫瘍学会認定研修施設(連携施設)

当科について

脳神経外科とは、脳・脊髄・末梢神経系およびその付属器官(血管・骨・筋肉など)を含めた神経系全般の疾患の中で、主に外科的治療の対象となりうる疾患について診断・治療を行う診療科です。日本の脳神経外科は、外科治療に特化した欧米の脳神経外科とは異なり、脳卒中や脳腫瘍・頭部外傷から脊椎・脊髄疾患・小児神経疾患や機能的脳疾患などを対象に診断・検査から手術・放射線治療・血管内治療・薬物治療・理学療法などの治療・予防まで非常に広い分野を担当しています。

※当科は、日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database : JND)に参加しています。

当科の特長

救急診療に力を入れています。救急では主に脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)や頭部外傷を担当しています。一般外来では脳血管障害、脳腫瘍、脊椎・脊髄疾患、認知症、機能性頭痛などの診療を行っています。緊急時は速やかに入院できる体制を整えており、専門医がチームで治療にあたります。治療は薬物療法と手術療法から最適な方法を選択します。手術は開頭手術だけではなく、血管内治療も行っています。院内に専門科が充実しており、神経内科、循環器内科、放射線科、リハビリテーション科などと連携して治療を行います。

主な疾患と治療

脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)

血栓溶解療法(t-PA 静注療法)、機械的血栓回収療法、減圧開頭術、血管吻合術、頸動脈内膜剥離術、頸動脈ステント留置術、開頭血腫除去術、定位脳内血腫除去術、動脈瘤頸部クリッピング術、動脈瘤コイル塞栓術、水頭症手術、経皮的血管形成術

脳腫瘍(良性脳腫瘍・悪性脳腫瘍・転移性脳腫瘍)

開頭腫瘍摘出術、生検術、放射線療法、化学療法

脊椎・脊髄(変形性脊椎症・椎間板ヘルニア・脊髄腫瘍)

頸椎前方固定術、椎弓拡大形成術、腫瘍摘出術

外傷(頭蓋骨骨折・頭蓋内出血・脳挫傷・脊椎脊髄損傷)

骨折修復術、開頭血腫除去術、減圧開頭術、頭蓋形成術、慢性硬膜下血腫手術、脊椎手術

老化・認知症(正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫)

正常圧水頭症シャント手術、慢性硬膜下血腫手術

機能的疾患(機能性頭痛・顔面痙攣・三叉神経痛)

薬物療法、顔面痙攣・三叉神経痛微小血管減圧術

炎症性疾患(髄膜炎・脳炎・脳腫瘍)

水頭症手術、脳膿瘍手術

脳卒中について

脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血に大きく分類されます。
脳卒中は、本邦のみならず世界的にも主要な死因であり、障害をもたらす最大要因となっています。以前より脳卒中は日本人の死亡原因の第3位でしたが、現在は第4位と治療は進歩してきています。しかしながら、それでも年間に約10万人の方が脳卒中でお亡くなりになります。また、要介護となった原因疾患の1位は脳卒中であり、その割合は約30%にまでのぼります。従って、脳卒中の予防と治療は重要です。脳卒中は再発する病気です。脳卒中の再発率は1年後では3.2%、2年後では5.8%です。また脳卒中は高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病が原因であることが多く、これらが原因となる脳梗塞の再発率は1年後で4.4%、2年後は9.4%といわれており、普段の内科的な治療が予防のために重要です。
脳卒中の症状
脳卒中でよくみられる症状は、突然に発症する言語の障害、半身の麻痺や感覚障害、視野の障害などです。また、障害される部位によっては突然におかしな行動をとる場合もあります。小脳や脳幹と呼ばれる部位に障害があると、浮遊感のようなめまいや、ふらつきを感じることがあります。また、くも膜下出血の場合は、突然の激しい頭痛も重要な症状です。重篤な脳卒中の場合には上記の症状に加えて、意識が悪くなったり昏睡状態になったりすることもあります。
いずれにしても、脳卒中と思われる症状が現れた場合には様子を見ることなくすぐに病院を受診することが重要です。
石切生喜病院は一次脳卒中センターに認定されており、多くの患者さまを受け入れています。

脳梗塞について

脳梗塞の原因としては、動脈硬化によるものと心房細動という不整脈によっておこるものが主要です。
動脈硬化による脳梗塞は、長年にわたる喫煙、多量の飲酒、不規則な食生活、運動不足、睡眠不足、過剰なストレスなどから、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病となり、そのために動脈硬化の状態となってしまった血管が詰まって起こると考えられています。また、動脈硬化により頚動脈が細くなって、これが原因で脳梗塞を起こすこともあります。このような場合には、状態が安定したのちに、後述する頚動脈内膜剥離術や頚動脈ステント留置術を検討する場合もあります。また、頭蓋内の血流が不足しているような場合にはバイパス術を検討する場合もあります。
心房細動がある場合には心臓の中で血流が滞ることで血のかたまりができ、これが脳の血管に詰まって脳梗塞となります。大きな血管がつまることも多く、重症であることもよくあります。
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脳梗塞の治療
治療としては、超急性期で治療が可能であれば後述するt-PA投与による経静脈的線溶療法や、カテーテル手術による機械的血栓回収療法を行います。
これらの侵襲的な治療後、あるいはこれらの治療が不要である場合では、血を固まりにくくする薬、脳を保護する薬などを使用します。この病気で注意が必要なことは、入院して治療を行っていても症状がどんどん進行してしまう方がいるということです。これを進行卒中と呼びますが、これをなるべく防止するために最初の1週間は強めの治療をおこないます。この期間は薬の副作用がでることがあるため血液検査を頻繁におこない、治療を継続できるか判断していきます。また、脳梗塞の急性期には数日してから出血したり(出血性梗塞)、あるいは脳が腫れてしまい(脳浮腫)、周囲の脳を圧迫しさらに症状が重篤になることがあります。このような場合には救命するために手術が必要になる場合があります。
その後は徐々に治療を軽くしていき、最終的には飲み薬だけの状態を目指します。治療の副作用としては、血を固まりにくくするため出血の危険性がやや上がることがあります。また、経過中にのどの機能が悪くなることによる誤嚥などのため肺炎になったり、麻痺のため臥床している時間が長くなるために尿路感染症になる可能性があります。また、脳の病気をおこした方は強いストレスから胃潰瘍になってしまうことがあります。これらが生じた場合には適宜治療をおこないます。

▶経静脈的線溶療法・機械的血栓回収療法

脳梗塞の超急性期治療として、発症から4.5時間以内を目安として、治療の適応があればt-PAとよばれる血栓を強力に溶解する薬剤を投与する場合があります。ただ、この治療だけではうまく血流を再開させることができない場合があり、近年ではt-PA投与に加えて、カテーテルを用いた血管内手術で、血管の中につまった血栓を機械的に回収する治療も行うことが増えています。脳の血管がつまると、どんどん脳梗塞が進んでしまうため、これらの治療はできるだけ早く行う必要があります。

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▶頚動脈内膜剥離術や頚動脈ステント留置術

脳の重さは体重の約2%に過ぎないですが、脳に供給される血液量は心臓から拍出される血液の約20%にものぼります。つまり、脳が正常に働くためには非常に多くの血液が必要ということが言えます。心臓から脳に血液を供給する血管は左右の頚動脈および椎骨動脈で合計4本あります。特に、頚動脈によって脳への血液供給の多くがまかなわれています。頚動脈はあごの下で2本に分かれ、1本は内頚動脈として脳へ、1本は外頚動脈として頭部の皮膚などを栄養します。頚動脈狭窄症とは、この2つに分かれる動脈の分岐部に、高血圧・高脂血症・糖尿病などによりおこった動脈硬化のためにプラークとよばれる物が付着し、狭くなり(狭窄)その部分での血流が乱れたり、場合によっては脳への血液の流れがとどこおっている状態です。この狭窄が高度になるにつれて脳梗塞を起こす可能性が高くなります。高度の狭窄のために脳への血流が低下したり、狭窄部分の不安定な血流によって作られた小さな血の塊(血栓)やプラークの破片が脳の血管に詰まったりすると脳梗塞が生じます。

頚動脈の狭窄は徐々に進行するものなので軽度の狭窄であればほとんど症状はありません。この状態を無症候性といいます。しかし狭窄が進行し様々な症状が引き起こされる場合があります。この状態になると症候性とよびます。内頚動脈狭窄が原因となる脳梗塞の症状としては、麻痺・失語・痺れ・言葉のもつれ・視野障害などが挙げられます。また、一過性に目が見えなくなる発作(一過性黒内障)を起こすことがあります。

通常、頸動脈狭窄症では抗血小板薬などの内服加療が優先されますが、中等度以上の内頸動脈狭窄症で、脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往のある症候性の方、また無症候性でも高度な狭窄が認められる方には内科的治療に加えて外科的治療の追加を検討します。外科的治療には頚動脈内膜剥離術(CEA)あるいは、頚動脈ステント留置術(CAS)があります。これらを追加して行なうことで脳梗塞の再発予防効果が高まることがわかっています。脳卒中の年間の発生率は症候性狭窄の方で13%程度、無症候性狭窄の方で2%程度ですが、外科的治療を加えるとこの危険性を半分から1/3に減らすことができます。

頚動脈内膜剥離術(CEA)では頚動脈を直接切開して、血管の中のプラークを摘出します。頚動脈ステント留置術(CAS)では主に足のつけねからカテーテルを挿入し、狭くなった血管にバルーンと呼ばれる風船のついたカテーテルを誘導し、血管を拡げた後、ステントを誘導して留置します。

これらの外科的治療のどちらを選択するかは、狭窄の状態、患者さまの全身状態などを総合的に判断し選択することとなります。

 

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▶バイパス術

脳の血管は糖尿病や高血圧、高脂血症などによって動脈硬化が進行し、細くなることがあります。これを動脈の狭窄と呼びますが、狭窄が進行すると脳への血流供給が低下し、必要な酸素の供給も低下することになります。脳は正常な状態では、血液中の酸素のおよそ30-40%を利用していますが、このような酸素不足の状況が長く続くと、必要な酸素を補うために無理矢理多くの酸素を取り込もうとして、50%以上の酸素を取り込むようになります。これにより、なんとか必要な酸素の量をまかなっています。しかし、このような状態では脳に余力がなくなってしまい、脳梗塞を起こしやすくなり危険な状態となっている場合があります。このような場合に、抗血小板薬内服などの内科的治療に加えて、頭の皮膚や筋肉を養っている血管を脳表の血管につないで不足した血流を補うことで2年間で15-20%と言われる脳梗塞の発生率を1/3程度にまで改善することができると言われています。

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脳出血について

脳出血の原因にはいろいろなものがありますが、最も多い原因は高血圧であり、脳出血全体の約60%をしめると言われています。そのほか、脳血管の奇形や動脈瘤、あるいは加齢により血管にアミロイドと呼ばれるタンパク質が沈着することが原因の場合もあります。また、血をさらさらにする薬を服用していることが原因となる場合もあります。脳の中にできた血腫による圧迫と虚血(血のめぐりが悪くなること)のため、血腫周囲の脳組織がやられてしまい、症状が出現します。
出血がそれほど大きくない場合には、手術は必要なく、まずは安静にした上で血圧をコントロールすることで出血が止まるのを待ちます。出血が止まるのに必要な時間は多くの場合24時間程度です。一方で出血が大きくて意識が悪いような場合や出血が止まらず、血腫が増大していった場合には救命のために、手術で血腫を除去することも考慮します。ただし脳出血の場合、血腫周囲の脳は出血をした時点ですでに破壊されているため、手術で血腫をとっても麻痺などの症状が改善するわけではありません。
また、入院中の検査の結果、高血圧性でない脳内出血であったとわかった場合には、それに応じた検査や治療が必要となる場合があります。
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▶脳動脈瘤・くも膜下出血

クモ膜下出血は脳卒中のひとつであり、突然激しい頭痛と吐き気がして、ひどい場合には意識不明になったり、麻痺などの症状が起こります。また、死亡することもあります。このクモ膜下出血の原因として多いのは、脳動脈瘤の破裂です。

脳動脈瘤とは脳の動脈の分岐部にできたコブのことです。動脈瘤がなぜできるのかは完全には解明されていませんが、一般に動脈の分岐部の血管の壁にもともと弱い部分があり、そこに血流が長年にわたって当たったり、加齢による動脈硬化や高血圧などの要因が加わって発生すると考えられています。この動脈瘤は脳ドックや頭痛の原因を調べる時に施行されたMRIで偶然発見されることも多いです。動脈瘤の壁は通常の血管にくらべ弱く破れやすく、破裂するとクモ膜下出血となります。まだ破れていない動脈瘤を未破裂脳動脈瘤といいます。動脈瘤自体の破裂率は合計で年間約0.7%程度ですが、大きな動脈瘤は破裂率が高いため、脳卒中治療ガイドラインに沿って、破裂予防のための手術をおこなうこともあります。

動脈瘤が破裂してクモ膜下出血になってしまった場合、約30-40%の人が治療を受ける前に死亡してしまうと言われています。また、治療を受けることができて社会復帰できる(元の仕事に戻れる・通常の社会生活が送れる)ようになる方は約20-30%であり、残りの約30-40%の方には様々な後遺症が残ってしまいます。後遺症は、軽いものであれば手足のしびれや軽い麻痺などですが、重症であれば植物状態となってしまいます。

クモ膜下出血では、動脈瘤の壁の薄くなった部分が破れて出血しています。多くの場合、病院についた時には一時的に出血が止まっていますが、もろい「かさぶた」によって止まっているだけなので、再度破裂してしまう可能性が高いです。すぐに血圧を下げる治療などを開始しなければ発症24時間以内に再破裂する危険性が高いと言われています。発症して24時間が経過しても適切に治療を行わなければ約20%の人で2週間以内に破裂すると言われています。再破裂がおこると,約半数の人が亡くなってしまいます。また適切に再出血に対する治療をしなければ、あとで述べる脳血管攣縮に対する十分な治療ができなくなる可能性があります。

破裂予防または再出血を防止する手術として現在では2つの治療法があります。それは、開頭手術によるクリッピング術と血管内手術によるコイル塞栓術です。開頭術と血管内手術のどちらをおこなうかは、動脈瘤の大きさ・形状・部位・全身状態などを総合的に考えて選択します。

脳出血の治療

▶開頭クリッピング術

再出血を防ぐためには、動脈瘤の内の血流を遮断する必要があります。手術は、全身麻酔でおこないます。まず皮膚を切開し頭蓋骨を外します。骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。顕微鏡を使って動脈瘤まで到達した後に、動脈瘤の頚部をチタンでできたクリップでつまんで動脈瘤に流れ込む血流を遮断します。

クリッピング術の際、正常な動脈が近くにある場合などでは、動脈瘤の“くび”の部分に十分にクリップをかけられないことがあります。このような場合には動脈瘤の部分的なクリッピングや、動脈瘤壁の補強術(動脈瘤コーティング術)しかできない場合があります。また、これらの方法では再出血の可能性がとても高いと判断された場合は、正常な血管を犠牲にせざるを得ない場合もあります。また、術中に動脈瘤に到達する前に再破裂が起こり、出血のコントロールができなくなってしまった場合、急速の脳が腫れてしまい手術ができなくなってしまうことがあります。

▶血管内コイル塞栓術

この方法は足の付け根の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、これを頭の動脈瘤まで挿入し、動脈瘤の内部をプラチナ等でできたコイルで詰めてしまう方法です。この方法は、開頭クリッピング術より痛みや出血などの侵襲性が低いという利点がありますが、再発率が高いことや動脈瘤の部位や形状によってはおこなえない場合もあります。

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▶脳卒中におけるリハビリテーションの役割

脳卒中によって障害された脳はもとにはもどらないことも多いです。症状を少しでもよくするために、必要に応じて早期よりリハビリテーションを施行します。長期のリハビリテーションが必要と判断される場合、リハビリテーション専門の病院に転院していただくことがあります。

▶脳卒中慢性期となったあとの治療

脳卒中は入院して治療をしていても状態が悪化する可能性がある病気です。この時期を急性期とよび、強めの治療を行ないます。さらにリハビリテーションをおこない、最終的には自宅復帰、社会復帰を目指します。しかし脳卒中は長年にわたる生活習慣によって痛んだ血管に原因があることも多いため、再発する可能性がある病気です。したがって、再発の可能性を少しでも下げるため、薬を内服し、生活習慣を整える必要があります。
高齢である方、高血圧・糖尿病・コレステロールが高い方・喫煙者・心筋梗塞になったことがある方などは再発率が高いため注意が必要です。これらの治療を地域の先生方と連携しつつ、減塩を心がけたバランスのよい食事、適度な運動を心がけることが大切です。

脳腫瘍について

脳腫瘍には様々な種類がありますが、市中病院でよくある脳腫瘍は転移性脳腫瘍・髄膜腫・膠芽腫・悪性リンパ腫などです。石切生喜病院はがん拠点病院であり、肺がんなどの患者さまも多いため転移性脳腫瘍の方も多いです。転移性脳腫瘍の多くは放射線治療が行われますが、大きくなってしまい放射線治療が困難な場合や、放射線治療後の再増大などの場合には手術による摘出をおこなっています。
髄膜腫の治療では血管内カテーテル治療で腫瘍を養っている血管を先につめてから摘出をおこなうことで、出血量を最小限にするような工夫をする場合もあります。
膠芽腫の場合は手術によってできるだけ多くの摘出をおこなったのちに放射線治療、化学療法を追加します。
悪性リンパ腫の場合には手術で一部の生検をおこなって診断が確定した後に、血液内科と相談し化学療法をおこないます。
その他、内視鏡などの器材が必要な場合には大阪公立大学脳神経外科に治療のために紹介しています。

頭部外傷後の慢性硬膜下血腫について

この疾患では、多くの場合は頭部打撲や転倒などの外傷の後、約3週間から2ヶ月の間にじわじわと頭のなかに血がたまってきて、頭痛、認知症のような症状、麻痺、言語障害、尿失禁などの症状がでてきます。頭の中には、通常の血腫とは異なり、時間がたっても固まらない血腫がたまっています。この血腫はある程度の大きさになると自然に吸収される可能性は低く、局所麻酔で抜く手術が必要になります。

外傷による急性頭蓋内出血 (外傷性くも膜下出血,急性硬膜下血腫,急性硬膜外血腫,脳挫傷など)

頭部外傷によって、脳の血管が切れて頭蓋骨の中に出血し、血の塊(血腫)をつくることによって脳の一部分が破壊されたり圧迫されたりして、その機能が破壊されている状態です。頭痛や吐き気の症状が悪化したり、血腫の部位により、手足や顔が動きにくくなったり(麻痺・失調)、感覚が鈍くなったりしびれたりします(感覚障害)。人によっては言葉が出なかったり(失語)、視野が狭くなったり(視野欠損)、ものが飲み込めなくなったりすることもあります(嚥下障害)。重症の場合は脳全体の圧力が非常に高くなってしまい、意識が悪くなり、命にかかわることも多くなります。
頭蓋内出血を来すと、その後その周りの脳の腫れによって、さらに神経損傷が広がることも危惧されます。また、実際の頻度は高くはないものの、一旦止まったと思われる出血が再度大きくなることもあります。
出血があまり大きくない場合には安静加療をおこないますが、出血が止まらない場合や大きな出血で意識が悪く生命に関わるような場合には救命のために手術が必要になることがあります。

正常圧水頭症

脳のなかの脳室という部位では脳脊髄液とよばれる液体が産生されており、この液体が脳と脊髄の周りを循環し、養っています。水頭症とは何らかの原因でこの脳脊髄液の吸収や循環が悪くなり、脳室が大きくなってしまい脳の機能が悪くなった状態です。
水頭症にはいくつか種類があります。脳出血やクモ膜下出血の直後におこる急性水頭症や、クモ膜下出血慢性期におこる続発性正常圧水頭症などは、水頭症の原因がはっきりしています。しかしこのような明らかな原因はわからないものの、水頭症を来し、症状を呈するものを特発性正常圧水頭症と呼びます。
正常圧水頭症でみられる特徴的な症状は3つあります。それは、歩行障害、認知症、尿失禁です。これらの症状がすべて生じる場合もあれば、部分的に認められることがあります。診断は腰に針を刺して髄液の一部を抜き、検査の前後で症状が改善するかどうかを見ます。この検査で症状の改善が見られれば、過剰な髄液を排出すれば、症状の改善が見られるということになります。効果があった人には、持続的に髄液を脳室から排出するための手術を考慮します。当院では主に脳室腹腔短絡術と呼ばれる手術をおこなっています。この手術により歩行障害の90%、認知症の70%、尿失禁の70%程度が改善すると言われています。

実績

年間手術症例(2019年~2021年)

2020年 2021年 2022年
脳神経外科的手術の総数 165 135 159
脳腫瘍:(1)摘出術 6 10 12
脳腫瘍:その他 - - -
脳血管障害:(1)破裂動脈瘤 7 3 4
脳血管障害:(2)未破裂動脈瘤 5 3 7
脳血管障害:(3)脳動静脈奇形 1 - -
脳血管障害:(4)頸動脈内膜剥離術 7 7 9
脳血管障害:(5)バイパス手術 4 1 -
脳血管障害:(6)高血圧性脳内出血(開頭血腫除去術) 7 7 4
脳血管障害:その他 7 4 -
外傷:(1)急性硬膜外血腫 1 - -
外傷:(2)急性硬膜下血腫 5 3 4
外傷:(4)慢性硬膜下血腫 35 38 39
外傷:その他 - - 7
水頭症:(1)脳室シャント術 36 31 26
水頭症:その他 - - 10
脊椎・脊髄:(3)変性疾患(変形性脊椎症)※は(椎間板ヘルニア) 1 2 ※1
機能的手術:(3)脳神経減圧術 - - 2
血管内手術:(1)総数 34 21 28
血管内手術:(2)動脈瘤塞栓術(破裂動脈瘤) 6 5 6
血管内手術:(2)動脈瘤塞栓術(未破裂動脈瘤) 2 1 2
血管内手術:(3)動静脈奇形(脳) 1 - -
血管内手術:(4)閉塞性脳血管障害(ステントなし) 12 6 12
血管内手術:(4)閉塞性脳血管障害(ステントあり) 12 8 7
血管内手術:その他 1 1 1
その他:上記の分類すべてに当てはまらない 9 5 6

年間入院症例(2019年~2021年)

2020年 2021年 2022年
虚血性脳血管障害 233 208 199
出血性脳血管障害 70 76 56
その他の脳血管障害 22 28 34
頭部外傷 92 82 96
脳腫瘍 15 17 21
感染症 - 5 14
水頭症 35 30 28
脊椎外傷 - 1 1
変形性脊椎症 - 2 -
脊椎血管障害 1 - -
脊椎 その他 1 - -
てんかん 38 26 26
機能障害・変性 7 2 5
その他 4 8 -
全入院総数 518 485 470

診療スケジュール

朝診
9:00~
(受付 7:00-12:00)
昼診
※予約制
14:00~
(受付 13:00-16:00)
夜診
18:00~
(受付 16:00-19:30)
朝診 1診 井上 首藤 交代制 交代制 井上 交代制※初診のみ受付11:00迄
2診 幸地 鶴田 - 幸地 永田 -
昼診※予約制 - - - - - -
夜診 1診 - - - 下竹 - -

2024.1.1.現在

担当医師のご紹介

井上 剛

いのうえ つよし

部長
  • 資格
  • 日本脳神経外科学会専門医・指導医
  • *臨床研修指導医
  • 学会役員
  • 日本脳神経外科学会近畿地方会評議員

永田 崇

ながた たかし

副部長・脳卒中センター長・心・脳血管カテーテルセンター副センター長
  • 資格
  • 日本脳神経外科学会専門医・指導医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医
  • 日本脳卒中外科学会技術認定医
  • 日本脳神経血管内治療学会専門医
  • 日本脊髄外科学会認定医
  • 日本リハビリテーション医学会認定臨床医
  • *臨床研修指導医
  • 学会役員
  • 大阪公立大学臨床准教授

鶴田 慎

つるた しん

医長・脳卒中センター副センター長
  • 資格
  • 日本脳神経外科学会専門医・指導医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
  • 日本脳神経血管内治療学会専門医
  • 脳血栓回収療法実施医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中指導医

首藤 太志

しゅとう ふとし

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