泌尿器科
施設認定
- 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医教育施設
- 日本臨床腫瘍学会認定研修施設(連携施設)
当科について
泌尿器科は尿の生成や排泄に関わる臓器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)や男性の生殖器などの男性に特有の臓器(精巣、陰茎、前立腺)の病気を取り扱う診療科目です。扱う疾患は、悪性腫瘍(がん、肉腫)から尿路結石や前立腺肥大症、過活動膀胱などの良性疾患まで多岐にわたります。当院では泌尿器科専門医を有する常勤医4名体制で診療を行っております。泌尿器科という性質上、デリケートな部分の診察はどうしてもありますが、プライバシーに最大の注意を払い診療を行っておりますので、安心して受診してください。
※当科では、『一般社団法人 National Clinical Database』による"日本全国の外科系施設における外科症例の全数把握を目的としたデータベース作成を行う"という趣旨に賛同し、患者さま個人を特定できない形式でデータ登録を行っています。
主な疾患・検査と治療
前立腺がん
前立腺とは男性にしかない組織で、膀胱の出口に位置し、尿道を取り囲むように存在します。前立腺の働きは精液の一部である前立腺液を作っています。前立腺がんは前立腺から発生するがんで、欧米人に多く見られますが、近年わが国でも増えており、2011年にはすべての男性のがんの15.9%を占め、胃がんに次いで2番目でした。早期には症状がなく、比較的ゆっくりと進行するものが多いです。進行すると排尿障害や血尿を来すことがあります。リンパ節や骨に転移することが多く、転移すると骨痛や神経麻痺がみられることがあります。男性ホルモン(テストステロン)が病気の進行に関連します。
検査
①前立腺がんを発見するためには以下の検査を行います。
- PSA検査:前立腺がんを早期に発見するために有効です。前立腺肥大症や炎症でも上昇することがあり、確定診断には生検が必要です。
- 直腸診検査:肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さを調べる検査です。
- 超音波検査:前立腺の大きさや形を調べ、前立腺がいびつな場合にはがんを疑います。
- MRI検査:他の検査で前立腺がんが疑われた場合、前立腺内の状態を確認します
②これらの検査で前立腺がんが否定できない場合、確定診断のために前立腺の組織を採取する「生検」を行います。
通常は肛門からエコーを挿入し、画像上確認しながら針を刺して10-12か所の組織を採取します。麻酔は局所麻酔もしくは脊椎麻酔で行います。
③前立腺がんが確定した場合は以下の検査を追加し、がんの進行具合を確認します。
- CT:リンパ節や肺などへの転移の有無を確認します
- 骨シンチグラフィ:骨転移の有無を確認します。
④これらを総合して治療方針を決定します。
治療
監視療法
監視療法とは前立腺生検で見つかったがんがおとなしく、治療をしなくても余命に影響がないと判断された場合、3-6か月ごとのPSA検査、直腸診、1-3年ごとの前立腺生検などを行い経過観察し、過剰な治療を避けるための方法です。病状が悪化する兆しが見られた時点で治療を開始します。
手術療法
がんが前立腺内にとどまっており、余命が10年以上あると思われる場合に選択します。(通常70歳代後半まで)前立腺を摘出し、膀胱と尿道をつなぎます。患者さまの手術の負担を減らすため、最近は大きくお腹を切らずに小さな穴をいくつか開けて行う腹腔鏡手術や手術支援ロボット(ダヴィンチ)で行われることが多くなっています。当院でも2023年にロボット支援手術の導入いたしました。ロボット支援手術は手術の合併症である出血や術後の尿失禁を軽減することができます。
放射線治療
放射線治療は、基本的にIMRT(強度変調放射線治療)を行っています。IMRTは照射する線量を細かく調整して膀胱や直腸などの前立腺の周囲の臓器に当たらないようにして前立腺のみに放射線を集中させる治療法です。直腸と前立腺の間にSpaceOARハイドロゲルと呼ばれるスペーサーを注入し、さらに直腸への被ばくを減らす取り組みも行っております。
内分泌療法(ホルモン療法)
前立腺がんは男性ホルモン(テストステロン)により増殖していますので、テストステロンを減少させたりテストステロンの働きを妨害したりする注射を行うことで前立腺がんを縮小させることができます。転移があり、手術や放射線治療などの前立腺だけの治療では治らない場合に行います。しかし、これらの内分泌療法の問題点は、長く治療を続けていると効かなくなってくることがあります。
2014年に「新規ホルモン薬」といってアンドロゲンの受容体に作用する薬剤、男性ホルモンの産生にかかわる薬剤が登場し、前立腺がんの内服治療がより複雑になっています。 当科では最新の知見をもとに最適な治療法の選択を心がけています。
化学療法
内分泌療法が効かなくなってきた場合、化学療法(抗がん剤)が使用されますが、効果には限界があり骨痛などの症状の軽減のために使用されます。
膀胱がん
疫学
膀胱がんはおよそ10万人に7人の割合で発生し、男女比はおよそ4:1と言われています。リスク因子として最も高いのは喫煙であり、その他遺伝性や職業性、膀胱の慢性炎症や放射線治療などがあります。症状としては肉眼的血尿を主訴に受診される方が多いですが、中には排尿時痛や頻尿などの膀胱刺激症状で受診される方もいます。
検査
膀胱がんの診断には膀胱鏡検査が必要になります。また、スクリーニング検査として尿細胞診や腹部超音波検査などが用いられます。膀胱がんと診断された場合には、がんの浸潤度や転移がないかなど、CTやMRIを用いてステージの評価を行います。
治療
膀胱は内側から粘膜層、粘膜下固有層、筋層、周囲脂肪織の4層構造になっており、どの層にまで癌が浸潤しているかで治療方法が異なります。
筋層非浸潤性膀胱癌
粘膜層または粘膜固有層にのみ浸潤しているがんを指します。膀胱がんのおよそ7-8割がこのタイプです。治療には内視鏡を用い、経尿道的に腫瘍を切除します(TUR-BT)。およそ1週間程度の入院が必要になります。また、ステージの再評価のため、再度同様の手術を術後2ヶ月以内を目途に行うこともあります(2nd TUR-BT)。再発予防のため、術後にアントラサイクリン系の抗癌剤やBCGを膀胱内に注入する場合があります。これらの薬剤を投与しても早期に再発する場合、膀胱全摘術を行うこともあります。
筋層浸潤性膀胱癌
筋層を含む膀胱壁の外側にがんが浸潤しているものを指します。画像上、他に転移がなくとも微小転移が存在している可能生が高く、標準治療は術前補助化学療法と膀胱全摘術になります。当院では腹腔鏡を用いた手術を行っており、臍周囲に操作用の1cm程の傷を5カ所作成し、手術を行います。膀胱を周囲からはずしたら、臍部分の傷を8cm程度に広げて膀胱を取り出して後述する尿路再建を行います。手術の傷が癒えてから、ストーマの交換の練習など含め、およそ2週間から1ヶ月程度の入院が必要になります。
尿路再建
膀胱全摘を行った場合、尿路再建が必要になります。方法には大きく分けて失禁型と非失禁型があります。
〈失禁型〉
- 回腸導管法
回腸の一部を用いて尿を排出する出口(ストーマ)を作成します。遊離回腸に切断した尿管をつなげ、その出口を皮膚から出すことで尿を体外に排出します。切断した腸は再吻合するため、便は肛門より排泄します。
- 尿管皮膚瘻
尿管を直接皮膚につなげ、尿を体外に排出します。尿管は脆弱であるため狭窄を生じやすく、術後カテーテルが必要になる場合が多いです。高齢者やリスクの高い患者さまなど、回腸導管が困難な場合に用いられます。
〈非失禁型〉
- 新膀胱
腸の一部を膀胱のように袋状に作成し、そこに切断した尿管と尿道をつなぎます。尿は尿道から出るため人工肛門の必要がないのが特徴ですが、腸が尿意を感じて収縮することは難しいため、自身で定期的に尿道にカテーテルを入れ、導尿を行う必要があります。がんの位置によっては作成できない場合があります。
術後の通院について
膀胱がんの再発率はおよそ50%と非常に高いため、定期的な通院による検査が必要になります。主に膀胱鏡検査や尿細胞診、採血、CT検査などを用いて再発がないかどうかを確認します。
転移を有する膀胱癌
診断時に転移がある場合や、術後転移が認められた場合には、全身に対する治療が必要になるため、抗がん剤治療を行います。これまでのプラチナ系抗がん剤に加え、近年様々な種類の抗がん剤が登場しているため、当院では最新の診療試験のデータをもとに、患者さまのニーズに合わせて最適な治療方法を提案致します。
腎がん
腎がんは腎臓にできるがんのうち、腎臓の腎実質より発生する悪性腫瘍です。腎盂や尿管より発生する腎盂尿管がんとは別で治療法も異なります。
原因としては喫煙、肥満、高血圧などの生活習慣病、VHL遺伝子、BHD腫瘍抑制遺伝子の胚細胞変異など遺伝によるものが報告されております。また透析患者さまにも腎がんが発生しやすいとされています。
初期症状として特徴的な症状はなく、検診や精密検査などで、偶然に見つかるものがほとんどです。肺、脳、骨、肝臓転移と同時に発見される腎がんもまれに認めます。
腎臓とは
腎臓は、腰より上の背中側に位置し、左右に1個ずつあります。そら豆のような形をしており、大きさは人の握りこぶし程度です。
主な役割は尿を造ることです。不要な老廃物を尿管から膀胱へ排出し、体に必要な物質(水分、糖分、ナトリウム、アミノ酸など)は吸収し血液中に戻します。これにより電解質や血圧を維持します。またエリスロポエチンという貧血と関わりの深い造血ホルモンや骨を作るビタミンDの活性化など役割は多岐に渡ります。
検査
造影CT検査が行われることが一般的です。腎機能が悪い方や腫瘍の性質をさらに詳しく調べるためにMRI検査を追加することもあります。特定の腫瘍マーカーはありません。採血検査ではカルシウム、血小板、好中球、ヘモグロビンの値をみてリスク分類し抗がん剤投与の際に参考にします。
治療
監視療法
早期のがんで高齢の患者さま、全身状態が悪く手術による侵襲に耐えられない患者さまで適応となります。手術などの治療を行わず外来で定期的に画像検査を行い経過観察する方法です。腫瘍の破裂や急激な増大がある際は手術療法などが適応となる事もあります。
手術療法
転移を認めないがんでは手術での摘出が第一選択となります。転移を認める場合も全身状態が良好な方、若年の方では手術を行う事があります。手術は大きく分けて根治的腎摘出術と腎部分切除術に大別されます。
- 根治腎摘除術
がんの存在する腎臓1つを全て取り除く手術です。サイズが大きいがん(腫瘍径が4〜7cm以上)、サイズは小さいけれども腎部分切除で合併症が発生した際に重症化するリスクが高い方で適応となります。腎臓は2つあるので1つを摘出しても日常生活に支障はきたしませんが、術後健側に転移する可能性もあるので定期的に画像検査し経過観察が必要です。当院では主に腹腔鏡下で手術を行っています。サイズが大きいがんでは開腹手術も検討することがあります。
- 腎部分切除術
がんが生じている部位のみを切除し腎臓を摘出せずに温存する方法です。当院では4センチ以下のがんで腹腔鏡を用いて腎部分切徐術を行っております。サイズが小さくても腫瘍の位置によっては腎部分切除が適応とならないこともありますので手術方法については担当医と相談し決定します。
薬物療法(抗がん剤治療)
他臓器転移を認める腎がん、手術が難しい進行腎がんには抗がん剤治療を行います。抗がん剤には免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬が主に用いられます。現在、様々な薬剤が開発されており、これらを単独もしくは組み合わせて投与します。腎がんの組織型やリスク分類、全身状態・年齢などを考慮し薬剤を選択します。
腎盂(じんう)・尿管がん
疫学
腎盂・尿管に発生する癌であり、全尿路上皮癌の5%程度と言われています。リスク因子などは膀胱がんと同様であり、主に喫煙です。症状も同様で血尿が主な症状となります。
検査
診断には造影剤を用いた造影CTが有用です。また、膀胱内に腫瘍が浸潤していないか膀胱鏡検査や尿細胞診検査を行います。造影CTで診断がつきにくい場合には、入院・麻酔下で尿管鏡検査を行い、直接腫瘍がないかカメラで確認します。
治療
腎臓と尿管を全て切除し、膀胱も一部切除する、腎尿管全摘術を行います。当院では腹腔鏡を用いて手術を行っております。アプローチの方法によっても異なりますが、概ね1cm程度の傷を4カ所作成し手術を行います。腎臓を取り出す際に下腹部に8㎝程度の切開を追加します。およそ1~2週間程度の入院が必要になります。
術後経過
膀胱内に再発する割合はおよそ50%と非常に高いため、定期的な通院が必要になります。主に膀胱鏡検査と採血、CT検査を用いて再発がないかフォローを行います。
尿路結石
腎臓で作られた尿は腎盂に集まり、尿管という管を通って膀胱に蓄えられ、尿道を経て体から排泄されます。これらの尿の通り道を尿路といい、尿のなかに含まれているカルシウムやシュウ酸、リン酸などが蛋白質などと結合し固まったものを尿路結石といいます。また結石はその場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石と呼び名が変わります。
尿路結石の主な症状は痛みと血尿です。結石は通常、腎臓でできますが、腎臓に留まっている間は痛みはなく、結石が尿管に詰まったり、結石が動くときに痛みます。痛みは結石のある方の側腹部に起こり、痛みがひどいときには動悸、息切れ、冷や汗、吐き気を伴うこともあります。
結石が尿管に詰まると尿がせき止められ、腎臓に尿がたまってしまう状態、いわゆる水腎症となり、結石のあるほうの背中が痛みます。水腎症が長い間続くと腎臓がだめになってしまうこともあります。血尿は目で見てわかるほど真っ赤な尿が出る場合と顕微鏡で見てはじめてわかる場合があります。
尿路結石は決してまれな病気ではなく、食生活の欧米化に伴い、その発生率は増加しており、日本人男性の11人に1人、女性では26人に1人が一生の間に一度はかかる計算になります。また尿路結石は再発しやすい病気で、食事療法を行なわなかった場合には,5年間で30~40%の人に再発すると言われています。
治療
尿管につまった結石の約60%は尿と一緒に自然に排出されます。1cmくらいまでの小さい結石は自然にでる可能性が高いので、尿管を拡げて結石の下降を促す薬を処方します。よく「結石を溶かす薬」を希望される患者さまがおられますが、残念ながら一部の成分を除き、「結石を溶かす薬」はありません。結石が出やすくなるよう水分を多く摂り、(2000mlが目標)痛いときは痛み止めを使い、排石を待ちます。痛みさえなければ仕事や家事もいつもどおり可能です。なかなか自然に降りない場合や、痛みなどの症状を繰り返す場合には治療が必要になります。以前はおなかを切って結石を取り出す手術が行われていましたが、最近ではおなかを切らずに体外衝撃波結石破砕術や尿道から内視鏡をいれて結石を砕く手術が広く行われています。
体外衝撃波結石破砕術 (ESWL)
レントゲンやエコーで結石の場所を確認し、からだの外で発生させた衝撃波(しょうげきは)を結石にむかって照射して、その強力なエネルギーによって結石を砂粒状に砕く方法です。細かく砕かれた結石は尿とともに自然に排出されます。今では尿路結石のもっとも一般的な治療方法になっています。
衝撃波は結石を砕くだけでからだのほかの部分にはほとんど影響がありませんが、治療中は軽い痛みを伴うため、治療の際は痛み止めを使用します。砕石後は一時的に血尿、発熱などが認められることがありますが、鎮痛解熱剤や抗生剤の点滴で治りますので、外来や短期間の入院で治療が可能です。
当院ではドイツ、ドルニエメドラックシステム社製、Dornier DeltaⅡを使用しています。衝撃波のエネルギーの調節範囲も広く、様々な種類の結石を破砕することができます。また患者さまに接するヘッド部分が大きく、皮膚の痛みが抑えられています。
ESWL治療の特徴
- おなかを切る必要がありません。
- 治療時間は1時間前後です。
- 治療中の痛みは軽度で、麻酔は不要です。(痛み止めの注射を使用することがあります。)
- 副作用・後遺症がほとんどありません。
- 一泊入院もしくは外来で行うことができますので、退院後はすぐに日常生活、職場への復帰が可能です。
- 高齢の方や、他に病気のある方(高血圧、糖尿病など)でも安心して受けられます。
- 砕石不良の場合、繰り返して行うことができます。
- この治療は健康保険が適用されます。
内視鏡による砕石手術 (TUL/f-TUL)
膀胱や尿管の結石には内視鏡を尿道から挿入し、結石を直接カメラで確認し、レーザーや超音波などで少しずつ砕石する手術があります。手術は全身麻酔もしくは腰椎麻酔(下半身の麻酔)で行いますが、短期間の入院での治療が可能です。尿管の下の方の位置に結石がある場合やESWLでは砕けない硬い結石の場合に内視鏡の手術を行います。
尿管鏡は硬性(金属製で硬い)あるいは軟性(胃カメラのようにファイバー製で軟らかい)があり、結石の場所等によって使い分けます。2cmよりも小さい結石であれば破砕、回収が可能です。結石の破砕はホルミウムレーザーで行い、通常は破砕した結石片も回収します。
実績
過去3年間の手術件数
診療スケジュール
昼診
※予約制
14:00~
(受付 13:00-16:00)
夜診
18:00~
(受付 16:00-19:30)
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木 |
金 |
土 |
朝診 |
1診 |
鳥越 |
杉田受付11:30まで |
江崎 |
山越 |
西川 |
担当医 |
2診 |
松田 |
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豊川 |
武山 |
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2024.10.1.現在
担当医師のご紹介
- 資格
- 日本泌尿器科学会専門医・指導医
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
- *臨床研修指導医
- 資格
- 日本泌尿器科学会専門医
- 泌尿器科指導医
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
- ダビンチサージカルシステム術者資格認定