麻酔の副作用や注意事項
麻酔の副作用、合併症と予防法
- 全身麻酔
- 気管挿管(気管の中に管を通す)に伴う合併症として声帯の炎症等に伴う嗄声(声がかすれる)や声が出しにくい、さらに手術後に咳や喀痰が出やすいなどが一般的です。ただし、これらは普通、,手術後2~3日でおさまります。これは特に、手術前にタバコをすっている方や風邪ぎみの方で起こりやすいでしょう。歯槽膿漏虫歯などで歯茎が弱っていたり、差し歯などがあると気管内挿管に伴ってこれらの歯の損傷が起こることもあります。非常に希な合併症として悪性高熱症という病気があります.これは麻酔中に急激に高熱が出て、体の筋肉が堅くなり、不整脈が発生し最悪の場合は命に関わることもあります。しかし、この病気は体質的(遺伝)に発生しやすく、手術の前に患者さまから十分お話を聞くことや血液検査などである程度予測することができます。
- 脊椎麻酔
- 比較的起こりやすいのは頭痛です。これは脊髄液の圧が下がることにより起こるとされています。通常は安静(手術後にあまり頭を動かさない)と点滴でおさまります。麻酔の効果(下半身がしびれる)はお部屋に帰って数時間でとれてきますが、非常に希に足の麻痺やしびれがとれないこともあります。
- 硬膜外麻酔
- 副作用ではないですが、硬膜外腔のチューブから局所麻酔が入っている間およびチューブを抜去してもその効果がきれるまでは、多少しびれ感や足の力が入りにくいことがあります。非常に希な合併症としては感染(チューブの入っているところからバイ菌が入って化膿する)や、チューブが抜けなくて体に残ったり、足の麻痺やしびれが残ることがあります。
以上の副作用や合併症は手術前の血液検査や診察,患者さまからのお話を聞くことにより、さらに麻酔の方法や使用薬剤を選ぶことによりほとんどの場合は避けることができますので、ご心配はいりません。但し,安全に麻酔や手術を行うためには、以下に書いてある注意を守っていただくなど、患者さまの協力も必要です。
- タバコは肺や心臓に害を与えます。喫煙者は手術中や手術後に痰が増えたり、新たな病気を引き起こしやすいので今すぐ禁煙してください。タバコは手術の前2週間止めることにより、手術後の咳や喀痰が軽くなると言われています。さらに手術後の気管支炎や肺炎の予防にもなります。
- 麻酔を始める時に胃の中に食物が残っていると、麻酔がかかって意識が無い時にもしも嘔吐すると、それが肺に入り、窒息や肺炎を起こします。これを防ぐために手術の前には一定時間、何も食べたり飲んだりしないでください(手術の前に看護師から連絡があります)。
- 手術室に入る時には入れ歯、眼鏡、コンタクトレンズ、指輪、ヘアピンなどをはずし、マニキュア、お化粧は落としてください。
患者さまの健康状態と麻酔
- 患者さまご自身が現在服用しているお薬について 副腎皮質ホルモン、血圧を下げるお薬、血液を固まりにくくするお薬、精神安定剤、その他
- 患者さまご自身が現在治療中、あるいはこれまでにかかった病気について 心筋梗塞、狭心症、高血圧、筋肉・神経疾患、腎臓、肝臓、喘息(ぜんそく)、甲状腺の病 気(バセドウ病)、糖尿病、てんかんや痙攣、緑内障(そこひ)、アレルギー、鬱(うつ)病 など精神的疾患、その他
- 患者さまご自身やご家族さま(血縁のある)の健康状態
・患者さまご自身が以前受けた手術の麻酔で高熱が出たり、危険な状態になったことがある
・患者さまと血のつながった方で以前手術を受けた時に高熱などの異常があった
・筋肉の病気を持っている(筋ジストロフィーなど)
・特異体質、アレルギー、アトピー、ゴム製品の使用で発赤、かゆみがあるなど
1-3までで該当する事柄がありましたら、必ず主治医の先生および術前診察に伺う麻酔担当医に申し出てください。
手術当日、お熱(37.5度以上)が出たり、風邪症状( 鼻水、咳、痰)があれば麻酔を中止することもありますのでご了承ください。