‘DINASTY’ method
画像診断の進歩により小さな異常陰影が見つかることが多くなるに従い、従来の検査法では良性か悪性かの判断が難しくなることがあります。この場合、全身麻酔下に手術で採取した組織を調べる必要があるのですが、TSであれば肋骨を傷つけずに小さな傷で終了できます。しかし病変が肺の表面に現れていない場合、触って確認するとなれば、通常の開胸手術となることがあります。そこで当科では病変部位を可視化する方法を考案し[1]、さらに簡単に利用できるCTガイド下マーキングキット(Detection of Invisible Nodule by Atraumatic Stamper in Thoracoscsopic surgery’ Kit:‘DINASTY’Kit®) を開発し[2]、 ‘DINASTY’method としてTSのみで組織診断を可能にしています。[1]Nishida T, et al. Eur J Cardiothorac Surg.2013;44:1131-3
[2]発明者:西田 達, 特許第6422276号
‘DONUTS’ method
画像診断の進歩のため小さい腫瘍が発見されることが多くなり、治療法としてlobectomyだけでなくsegmentectomyの有用性が公表されました[1]。このSegmentectomyに重要なのは腫瘍からのマージンの担保であり、触知できない場合、TSではマージンの担保が難しい場合が生じます。そこで当科では腫瘍の部位を可視化し[2]、さらにドーナツ状に作成したシートを用いる方法(Dual Outline of Navigating Utensil in Thoracoscopic Segmentectomy’ method:‘DONUTS’method)を提唱し[3]、腫瘍からのマージンの担保したTSでのSegmentectomyを行っています。[1] Saji T,et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2017;65:133-6
[2] Nishida T, et al. Eur J Cardiothorac Surg.2013;44:1131-3
[3] Nishida T, et al. Eur J Cardiothorac Surg.2016;49:698-700
‘Tachosuture’ technique
肺切除により生じる遷延性気漏 ( >7 days) は15-25% に発生し、合併症・入院日数・医療費の増加が問題となります [1] 。当科ではこの遷延性気漏の防止法として‘Tachosuture’ Techniqueを考案し [2 ] 、 TSにおいても以前から利用し、さらに従来では困難であった場合でも簡便に行えるよう改良を加えた‘Tachosuture’ Technique 変法を用いることで遷延性気漏ゼロを目指した取り組みを行っています。[1] Belda-Sanchis J,et al. Cochrane Database Syst Rev 2010, Issue 1
[2] Nishida T,et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2017;65:133-6
肺切除前の臓側胸膜の補強
気胸の術後再発を危惧し、肺病変の切除後に壁側胸膜の擦過による胸膜癒着の促進や医療材料による臓側胸膜の被覆などの追加処置が行われることがあります。当科でも医療材料により臓側胸膜を被覆することはありますが、これに加えて、あらかじめ臓側胸膜を低電圧凝固により焼灼・補強してから切除することで、切除部分からの新規嚢胞の発生を予防しています。
肺アスペルギルス症に対する術前経カテーテル血管塞栓
前述の通り単純性肺アスペルギローマの第一選択は外科切除になりますが、この疾患は多数の新生血管を伴う強固な癒着を胸腔内に作り出す事が多く、剥離操作に大量の出血を伴うため体に負担の大きい手術となります。そこで当院では放射線科と連携し、流入する新生血管を術前に血管内カテーテル検査で確認・塞栓し手術に臨むことで、術中の大量出血を予防しています。また、当科が得意とするTSと併用することで、より体に負担の少ない手術を実現しています。