リハビリテーション室
リハビリテーションとはWHO(世界保健機関)によれば「能力低下及びそれにもたらす状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含む」とされています。さらに障害者が環境に適応するための訓練を行うだけではなく、患者さま、家族、地域社会がリハビリテーションに関係するサービス、社会制度に関わり合うことも重要です。
当院のリハビリテーション室の特徴
- 医学的なリハ(理学療法・作業療法・言語療法)はもちろん、社会制度の活用など社会生活力を高める支援(ソーシャルワーカーなど医療系スタッフ)など総合的に行っています。
- 医師、看護師らとの連携を大切に、 入院・手術直後の急性期から早期介入し、早期退院を目標にしています。
- がんリハ、心リハは専門性の高いスタッフが在籍しており、がん患者さまや、心疾患の患者さまに対して積極的にリハビリテーションを実施しています。
- 入院中の患者さまの転倒予防に多職種で介入しています。
転倒予防の原因であるサルコペニア(加齢による筋力低下等)を有している患者さまに対し、筋力トレーニングや転倒予防指導を行っています。
- 摂食嚥下支援チームの活動で嚥下リハや口腔ケアに、より積極的に介入し予防リハにも努めていく体制を構築しています。
施設基準
- 脳血管疾患等リハビリテーション料Ⅰ
- 廃用症候群リハビリテーション料Ⅰ
- 運動器疾患リハビリテーション料Ⅰ
- 呼吸器リハビリテーション料Ⅰ
- 心大血管疾患リハビリテーション料Ⅰ
- がん患者リハビリテーション料
- 摂食機能療法
- リンパ浮腫指導管理料
修了研修
- がんのリハビリテーション研修会
- 臨床実習指導者講習会
加入協力・学会
- 日本理学療法士協会
- 日本作業療法士協会
- 日本言語聴覚士協会
- 日本心臓リハビリテーション学会
- 日本心不全学会
- 日本循環器学会
- 日本肩関節学会
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
学会等発表実績
- 2018年 第22回日本心不全学会学術集会
「健常成人におけるバランスボール運動の運動強度について」
- 2021年 第25回日本心不全学会学術集会
「疾患別にみた6分間歩行距離の外来心臓リハビリテーションによる経時的変化」
- 2022年 第19回日本肩の運動機能研究会、第49回日本肩関節学会
「セルフエクササイズ開始時期がARCR後の可動域に及ぼす影響」
その他
理学療法部門では生涯学習制度の前期講習(独自の研修プログラム)を受ける体制を整えています。
理学療法部門
ケガや病気などで障害が生じた身体の機能回復や維持および、障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(電気・光線・温熱)などを用いて、自立した日常生活が送れるように支援します。患者さまひとりひとりについて身体能力や生活環境等を評価し、個々に合わせたプログラムを作成します。
評価・検査
まずは患者さまの状況を把握するために、問診(症状・生活環境)や体力測定、動作の観察等を実施します。その結果をふまえて総合的に判断し、個々に合わせたプログラムを作成します。
訓練内容
関節可動域訓練
患者さま個々の原因により動かしにくくなった関節の可動域を拡大させたり、関節が固くなるのを予防する目的で実施します。
筋肉・腱・靱帯・皮膚などを対象にアプローチしていきます。
筋力増強訓練
低下した筋力の回復や、更なる筋力低下の予防を目的としています。理学療法士が強度や頻度を患者さまひとりひとりに合わせて実施します。
動作練習
寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行・階段昇降など、日常生活で基本的な動作の訓練を個々の状況や環境、生活スタイルに合わせて実施します。
寒冷療法(アイシング)
術後等の炎症症状(痛み・腫れ・赤み・熱感)が強い場合に症状の緩和を目的に実施します。
温熱療法
ホットパックや渦流浴を使用し、循環の改善や痛みの緩和を目的に実施します。
作業療法部門
食事、トイレ、歯磨き、着替え、家事などの日常生活、仕事、遊び、趣味など、作業療法の「作業」とは、人の生活におけるあらゆる活動の事を指しています。作業療法では、病気・ケガ・事故により、これまでの人生では経験したことがなかった身体面・運動・動作の使いづらさ・しづらさに対して、その方に合わせた食事動作訓練、トイレ動作訓練、手指・腕への機能回復訓練などを実施し、再びその人らしい生活を送れるよう治療や援助を行っていきます。
主な対象疾患とプログラム
整形外科疾患
- 各手指骨折
- 橈骨遠位端骨折
- 肘骨折
- 絞扼性神経障害など
- 腕や手の関節の可動範囲や手指の細かい動き、筋力の回復
- 必要に応じた装具(スプリント)の作成
- ケガをした腕や手の自主管理方法や自主訓練の指導
- 日常生活や仕事などに必要となる手の機能改善
主に骨折の患者に対し機能訓練、自主訓練指導を行っています。
中枢神経疾患
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
- 硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
- 頸椎症性脊髄症など
- 疾患により動かしづらくなった腕や手の機能回復
- 効率的な日常生活活動の獲得
- 高次脳機能などの評価と改善への援助
- 在宅復帰、職業復帰への援助
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害では、今まで意識せずとも出来ていたことが、突然できなくなることがあります。身体機能面だけでなく、精神面にも配慮し、その方に少しでも寄り添えるように、日常生活の動作訓練や、運動機能の回復を手助けできるように、関わっていきたいと思っています。
言語療法部門
ことばによるコミュニケーション(言語や発声・発音など)や摂食・嚥下(食べたり飲み込んだりすること)、また高次脳機能(記憶や注意力など)に難しさを抱える方々のリハビリテーションを行い、より良い生活ができるようサポートしています。
検査・評価
まずは本人の面接や検査、観察から、症状や原因、問題について調べます。
医師による診断情報や既往歴などからも分析をし、それぞれの患者さまに合ったリハビリのプログラムを立てます。
嚥下造影検査
嚥下障害の患者さまに対して、ケースによって医師とともに嚥下造影検査を実施することもあります。バリウムの入った飲料や食材をX線透視下で食べてもらい、透視像をDVDに記録し、嚥下運動や適切な食形態を評価・診断する検査です。
高次脳機能障害の検査
高次脳機能障害の患者さまに対しては、必要に応じて下記の検査を実施しています。
- 標準失語症検査(SLTA)
- ウエクスラー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)
- ウエクスラー記憶検査(WMS-R)
- BIT行動性無視検査
- 標準注意検査(CAT)
- リバーミード行動記憶検査
- 遂行機能障害症候群の行動評価(BADS)など
機能回復訓練
構音訓練
発声・発話のために必要な姿勢や呼吸法の指導、口の運動の指導など
コミュニケーション訓練
言いたいことを表現する、相手が言っていることを理解する訓練
高次脳機能訓練
集中力や注意力、記憶力に対する訓練
嚥下訓練
舌や唇の動かし方、飲み込みのトレーニング、食事の姿勢や食べ方の指導など
リハビリテーションコーナー
理学療法コーナー:外来、入院の方がここでリハビリを実施しています
作業療法コーナー:主に手の外科患者さまの訓練を行います
カーテンコーナー:リンパ浮腫の患者さまなどが使用するために設置しました
吸引器:リハビリテーション室にて吸引、酸素供給が可能で、緊急時にも対応できます
5F病棟訓練室:病棟に訓練室(2カ所)、言語聴覚室(1カ所)を設け、病室からの距離が短く効率的なサービスが提供できます
その他チーム活動
摂食嚥下支援チーム
当院では、嚥下機能や口腔機能が低下し摂食嚥下、口腔ケア等に問題を抱える患者さまに対し、チームアプローチとして摂食嚥下支援チームを立ち上げ、言語聴覚士だけでなく様々な職種のスタッフと共に問題解決に向けて取り組んでいます。
チーム構成
言語聴覚士、摂食嚥下認定看護師、歯科衛生士、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師など多岐にわたる職種のスタッフにより構成されています。
活動の概要
脳卒中患者さまや廃用症候群患者さまなど、医師の指示のもと誤嚥リスクが高い方や機能低下をきたした方を対象に嚥下訓練や口腔ケアを実施し、情報共有を行っています。
今後は対象者を拡大し周術期患者さまへの早期介入、誤嚥性肺炎患者さまへのスクリーニング等を行っていく予定です。また、看護師向けの勉強会(食事介助方法、口腔ケア等)を行い、スタッフのスキルアップを目指していきます。
肩リハチーム
当リハ室では肩関節治療の専門的な知識・技術を学ぶため「肩に特化したチーム」が存在しています。肩関節専門医の指示のもと、理学療法士が専門的なリハを提供することを目標としています。肩関節疾患を患った患者さまの日常生活の質の向上を目指し、日々、肩関節リハの知識・技術の向上に努めています。
肩関節の障害は日常生活に大きな影響を与えます。高い所に手が届かない、頭が洗えない、服の着替えができない、痛くて眠れないなど…症状が様々なように患者さま個々によって原因も様々です。肩関節を動かすためには上腕骨・肩甲骨・鎖骨の3つの骨と、その骨から構成される4つの関節と付着する靭帯・腱・筋の軟部組織が正常に動くことが重要となります。その内、1つでも破綻してしまうと痛みが生じ、動きが悪くなることがあります。その為、肩関節リハでは肩専門医による診断と治療のもと、理学療法士が患者さまの状態合わせたリハを行います。関節可動域、筋力の改善、生活指導、肩関節に影響を与える体幹・下肢にアプローチを行う事により痛みの軽減、動きの改善を図ります。
手術を予定している患者さまに対しては術前からリハを開始し、手術に向け評価・準備(装具の着脱方法、生活指導、術後着衣の提案など)を行っております。
患者さまの自主トレーニング
当院では肩関節専門医と理学療法士が、患者さまの状態に合わせた自主トレーニングメニューを考案し指導させて頂いています。
当院の肩関節チームの取り組み
2週に1回肩関節専門医と共に、肩カンファレンスを実施しています。
月に1回肩関節専門医と共に、肩勉強会を実施しています。
臨床研究及び学会活動にも積極的に取り組んでいます。
当院でリハを実施している代表的な疾患及び手術例
肩関節周囲炎(サイレントマニュピレーション、関節受動術)
腱板断裂(鏡視下腱板修復術、リバース型人工肩関節)
インピンジメント症候群
骨折(上腕骨・鎖骨・肩甲骨)
変形性肩関節症(人工肩関節)
肩関節不安定症(Bankart修復術、直視下烏口突起移行術)
投球障害肩
スタッフ紹介
関連情報