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手掌多汗症の胸腔鏡下交感神経遮断術

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手掌多汗症は、特に精神的緊張時に手のひらに多量の汗をかき、生活に大きな支障をきたす疾患です。緊張時に手のひらの汗が増えるのは「手に汗握る。」の言葉どおり、多くの人が経験するところですが、この病名がつく人の汗の量は想像を絶するものです。 テストで紙がぐしょぐしょになる、握手ができないなどなど、患者さま本人の悩みはさまざまでかつ深刻です。

発汗中枢は視床下部にありますが、手掌多汗症は精神性発汗で大脳からの刺激が深く関与していると考えられます.この神経刺激経路が胸部交感神経を経由しているので同部でこの経路を遮断すれば手のひらの汗が止まります。 下記の如くさまざまな治療法がありますが、重症の方には効果がないことが多いのです。

皮膚科的治療

アルミニューム製剤等の止汗剤塗布イオントフォレーシス

精神科、心療内科の治療

自律神経調整剤の内服、自律神経訓練法

麻酔科、ペインクリニック

星状神経節ブロック、交感神経節ブロックなど
手術効果はほぼ100%です

手掌多汗症に対するする胸腔鏡下交感神経遮断術

概要 胸部交感神経遮断により直後より手掌の発汗停止が得られます。腋窩、足底の発汗は減少する方もありますが、逆に増える場合もあり予測できません。
手術適応

高度の手掌多汗症で皮膚科学的治療等で充分な効果が得られない場合

注:腋窩多汗、足底の多汗にも同時にお悩みの方
これらの部分の汗は手術により逆に増加する場合もあるので慎重にお考えください。

また下記の合併症がおこりえますので、極端な言い方をすれば、「手のひらの汗さえ止まれば、他の部分はどうなろうとも我慢できると言える方が手術の対象になります。
手術法

麻酔
胸腔内観察・操作のため肺虚脱が必須であるため,分離肺換気にて全身麻酔を行います。

手術創
腋窩に約2~3㎜の長さの創2-3ヵ所

手術操作
  • 創より胸腔鏡(2-3㎜径スコープ)を挿入し観察します
  • 他の創よりさまざまな手術器具を挿入し剥離,露出,切除等の操作を行います
  • 通常、第3、第4肋骨前面の交感神経幹を切除します
  • 患者さまと御相談をさせて頂き、症状、ライフスタイル等を考慮した上で行う為、方法が異なることがあります
  • 片方のみまたは、期間をおいて片方ずつ手術を行う場合があります
合併症

代償性発汗
ほぼ100%に生じます。遮断レベル以下の背中、胸,腹部、大腿部等の発汗が増強します。ある程度は生理的に必要な発汗なのですが、病的に多く発汗が増える方もかなりおられます。この場合患者さまにとってはあらたな悩みの種となり,手術したことを後悔される方もおられます。この場合、もとに戻す方法がありません。この点で手術適応の慎重な判断、術式の選択と患者さまへの充分な術前説明が必要となります。

気胸、血胸
胸腔内操作により生じ得るがごくまれです。

ホルネル症候群
星状神経節の切除あるいは損傷により生じ得ますが、切除レベルの確認により実際上まずありません。しかし神経走行が異常な場合にごく稀に軽度のものが起こる可能性があります。この場合もほとんどが一過性です。

心臓への影響
交感神経遮断により、心臓神経枝も一部遮断されるため、心拍数が約10%減少すると報告されています。また、手術中や術後に一過性の不整脈が時折みられます。永続的な不整脈も報告例がありますが極めて稀です。

創痛等
術後、胸全体が痛む、深呼吸がしずらいなどの訴える患者さまもおられますが一時的で1週間以内に消失します。

注:一般的に言って100%安全な手術はありえません。
予想外の合併症が起こる可能性がないとは言い切れませんが、この手術はきわめて安全な手術の部類に入ると考えます。

 

受診から術後まで

  1. 完全予約制となっておりますので、事前にお電話にて御連絡下さい。(予約受付時間:月~金 9:00~17:00 / 診察曜日:木・金・土 9:00~12:30 担当医)
  2. 詳しい手術の説明と御相談の上、手術を受けられることが決まれば、術前の検査(胸部レントゲン、心電図、血液検査等)を行います。同日麻酔科診察を受けていただく場合もあります)。
  3. 手術日の朝入院。
  4. 翌日に検査結果、後退院。
※手術は原則一回に片側のみからとなります。